枝野 幸男 著
集英社
鳩山由紀夫新政権になっての目玉企画の1つが事業仕分け。この事業仕分けを統括した言わば事業仕分けの中の人である枝野幸雄行政刷新担当大臣が書いた事業仕分けの目的、やり方、実際の結果、課題などをまとめた本。政治の本など興味なかったが事業仕分けというキーワードだけで読んでみたが、非常に分かりやすく、おもしろかった。
事業仕分けを行った意義(変わったこと)は、以下と受け取った
・事業の存続に関する議論が国民にオープンになった
・事業の説明責任が事業者の側に移った
上記1つ目は、オープンになったことで、事業仕分けの結果は法的に拘束力がないもののこの結果を覆すような予算要求を行う場合、それ相応の説明を行う必要が出てくることが大きい。事業仕分けで仕分け人からの質問にちゃんと答えられなかった官僚が多かったようなので、法的拘束力がなくても事実上拘束力があるということになるだろう。
2つ目は、以前は予算を縮減するにはそれを指摘する側に予算が少なくてよい証明/説明をする必要があったと言う。しかし、事業仕分けでは、指摘する側(仕分け人)ではなく事業者側(官僚など)が予算の必要性を証明/説明することになった。これは通常の会社の費用調整などでは当たり前で、予算の必要性を説明できなければ予算がカットされる。国の予算では通常の社会での当たり前になっていなかったとは驚きだ。
一番分かりやすい例は、スパコンでの蓮舫参議院議員の次のコメントだ。
「世界一を目指す理由は何ですか?二位じゃダメですか?」これを最初テレビのニュースで聞いたときは、「何も分かっていないな」と思った。しかし、上記2つ目の考えに当てはめると、官僚が、皆が納得できる世界一を目指す理由を説明すればよかったことになる。おそらく蓮舫参議院議員もスパコン事業を軽視していたわけではなく、純粋になぜ世界一じゃないとダメなんだろうと思ったから質問しただけだと思う。この質問に答えられなかったので予算が縮減されたと言えば、全くその通りである。
スパコンの例を含めて国民が事業仕分けをちゃんと理解していない部分はあると思う。それは事業仕分けを知らな過ぎる(今回初めてなんで当たり前だが)、そしてメディアの報道の仕方にも問題あるのではないか?議論が白熱したところ(先のスパコンや、蓮舫参議院議員に女性の理事長が「私の話も聞いてください!」と叫んだものとか)だけ報道して、本質が伝わっていないような気がする。元宇宙飛行士の毛利衛さんが館長と務める日本科学未来館の事業の縮減なども、毛利さんでもカットされたと思っていたが、運営が独立行政法人から財団法人へ再度委託されている部分に関して縮減であり、毛利さんが使える予算は変わっていないらしい。やはりこのような部分がちゃんと報道されないと国民としては事業仕分けを正当に評価できなくなってしまう。面白おかしく報道しないと視聴率が上がらないのかもしれないが、正確に報道してもらいたいものだ。
本書でいくつかの仕分け議論が再現されていて、仕分け人と官僚の丁々発止を感じることができたが、やはり実際の映像で見たいと思った。平日の昼間に行われるとサラリーマンは生で見れないので辛い。本書は、事業仕分けや政治に興味がある人だけでなく、日本人みんなに読んでもらいたい本だと感じた。
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