小池 良次 著
インプレスR&D
ITジャーナリストでサンフランシスコ在住の小池良治さんのクラウドを解説した本。グーグルの動きを中心に今までの歴史というか過去のできごとから数年後の世界を大胆に予言し(?)ている。
IT業界の人間だけでなく、最新のITに詳しくない人でも読めるように、新しい概念などは解説に加えて、大変分かりやすい日常生活に密着した例を用いていて好感が持てる。いろんな人への説明がしやすくなるために、こういう例を使えるようになりたいものだ。また、ITに詳しくない人向けなのか、通常アルファベットで書くものの多くをカタカナで書いている。個人的にはプログラミング言語のJavaを「ジャバ」と書くのは非常に抵抗がある。もう少しアルファベットのままでもいいのではないかと思った。
著者は通信業界が専門とのことで、そのせいかアプリケーションだけでなく、ネットワークやデバイスを含めた総合的なものの見方で論じているところがすばらしい。クラウドビジネスの普及期を切り開く条件として、クラウドアプリケーションサービス(ネットアプリケーション)、クラウドインフラサービス(データセンター)、クラウドネットワーク(ネットワークパフォーマンス)を挙げている。さらにクラウド成熟期を担う条件として、モバイルネットワーク、クラウドコンテンツサービス(コンテンツとアプリケーションの融合)、オールIPネットワーク(マルチデバイスネットワーク)としている。これらがいずれも2011年から普及期、2015前後から成熟期と予測している。もっと早く来そうな気もするが、これは私がIT業界にいるからそう思うだけか? 一般の人まで認知されるには急速な変化を遂げている世界でも、2015年くらいになるというのだろう。
最後に日本はソフトウェア業界でアメリカに遅れを取っているが、追いつくためもしくは今後のクラウド時代に向けて、いくつかの提言をしている。
- 社内IT教育の充実
- 終身雇用制度の見直し
- 人材流動性の高い(中途採用、中途退社に寛大な)起業風土
- シリコンバレーとの人材交流
このクラウド時代を担う身としては、近い将来においてのクラウド化の予測と日本の提言を肝に銘じて、これから時を有意義に過ごして行きたい。
0 件のコメント:
コメントを投稿