クラウド時代と<クール革命>
角川 歴彦 著
片方 善治 編集
角川書店
角川グループホールディングスの会長の角川歴彦さんのクラウドについて大胆な考えをまとめた本。書籍や映像などのコンテンツを提供する会社のトップとして最近の出来事について考察や時代の波に乗った戦略を展開している。
前半、クール革命といって、「日本のコンテンツ産業はすばらしい」ということを強調している。これについて明確なつながりが見えなかったが、おそらく現在から近未来のクラウド全盛時代に向けてクールな(かっこいい)コンテンツを生み出す日本が主役となって欲しいとの意味がこめられていると思う。中盤にはクラウドを取り巻く時代の流れを説明し、最後にある著者の考えへつながっていく。
著者は、アップルがやりだしたiTuneStoreでの音楽に続いて、グーグルやアマゾンさらにはiPadを擁するアップルの書籍のクラウド化を述べ、その後に映像、映画が同じような状態になると言う。このようにクラウドにすべてが集約するのが著者は2014年と具体的に言っている。これが本当にそうなるかはわからないが、現在の技術革新のスピードを考えるとあながち早過ぎるという予想ではないと思う。
私の会社(いわゆるSIer)でもちょっと前からクラウドというキーワードの仕事が増えたり、4月の組織改変でクラウドとつく部門ができたりと会社(グループ会社含めて)クラウドに力を入れているようだが、何でもクラウドの時代がすぐくるのだろうか?自社の例を挙げると、明らかに仕事に関係ないサイトはアクセスできないような仕組みが導入されているが、クラウドサービスも同じようにアクセスできなくなっている。代表的なサービスは、Google DocsやEvernoteで、おそらく会社の機密情報や顧客情報が漏洩するのを恐れているようだ。インターネットに接続できればどこにいても同じようにデータにアクセスできてしまうのは情報漏洩のリスクが高まるのは分かるが、クラウドサービスを提供しようとしている会社でクラウドサービスが使えないのはいかがなものかとも思う。会社の情報管理部門が近い将来のこの著者の言うクラウド時代に対応しないと、時代から取り残されてしまう気がしてならない。
さて、著者はアメリカと日本の企業の競争文化の違いも述べている。アメリカでは何があっても(業界が硬直するとしても)、競争をすることを追求する。そのため、グーグル、アップル、アマゾン、マイクロソフトなどとてつもない力を持った企業が生まれる。その企業が多くの利益を得て、その利益で新しい事業を生み出ることの繰り返しで突出した存在になっていく。一方、日本はそこまではやらず、限られたパイをいくつかの企業で「仲良く」分け合う平和的な文化といっている。このような土壌では、アメリカのような突出した企業は生まれないし、イノベーションも起こせないのだろう。
最後に著者は、クラウド化が進むと世界中には5台のコンピュータに集約されるというIBM創業者トーマス・ワトソンの言葉を受けて、自分の考えを述べている。ちなみに、5台のコンピュータというのは、現代風に言えば5つのデータセンターもしくは5社で運営されるデータセンター(とネットワーク)であろう。まぁ、世界に5つのデータセンターしかないというのであれば、1つは日本に欲しい、そしてそれは国が主導して構築するべきと言っている。これには大きな違和感がある。これほど大きなプロジェクトであれば国が主導して行うのは当然だとは思うが、今の日本は縦割り行政となっていてこのような複数の省庁が関連したプロジェクトがスムースに進むとは思えない。だからといって、国内の企業でできるかと言えばそうではないだろう。皆でパイを分け合う日本ではうまく行くとは思えない。
では、日本の2014年はどうなっているのか?IT業界に身を置く者として他人事ではないのだが、日本がどう進んでいくか見てみたい。
2010年4月13日火曜日
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