ギリシア神話 下
呉 茂一 著
新潮社
上はギリシア神話の神の話が中心だったが、下は人間の話が中心。英雄と称されるテーセウス、ヘラクレスの話の後に、アルゴー船遠征、トロイヤ戦役の話と続く。
英雄2人は、テーセウスよりかはヘラクレスの方が面白みがある。特に12の功業は興味深く読んだ。読めば読むほど剛勇無双ということがよくわかる。12の功業の1つであるヒュドラーを退治したときに、その猛毒をとっておき矢に塗ることでその後数々の功績を残したが、これが彼の命取りになるとは思ってもみなかっただろうし、悔いの残る最期だったかもしれない。ちなみに、ネッソスを先の毒矢で殺したとき、ネッソスはヘラクレスの妻に自分の血を採っておき何かのときに衣服に浸せばよいと言った。ヘラクレスの妻は、ヘラクレスが別の女に入れ込んだときに実践した際、ヒュドラの毒がヘラクレスの全身に回って命を落とした。
一番楽しみだったのはトロイヤ戦役。戦争の始まった理由はトロイヤのパリスのとある行動だったが、これが10年近く続くとは誰も思わなかっただろう。ギリシアの英雄アキレウスの話は比較的あっさりでちょっと残念だったが、その代わりギリシアの軍師との言うべきオデュッセウスの戦後10年かけて故郷に帰る話が充実していておもしろかった。
このトロイア戦役では、アキレス腱の語源となったアキレウスの弱点のかかとの話がなかったが、上巻に出ていた。アキレウスの母である女神テティスが冥府を流れる川ステュクスに幼いアキレウスを浸して不死身にした際、かかとに葉っぱが付いていて川の水が触れなかったかかとが弱点になったとのことだ。私が知っていた別の説では、葉っぱではなく、テティスがかかとを手で支えていたために弱点になったとあった気がする。ちなみに先のパリスの矢がそのかかとに刺さってアキレウスはテティスの言った通りトロイヤ戦役で命を落とすことになる。
アキレウスは、戦争の功績でもらい受けたブリーセーイスという女性をギリシア軍総大将のアガメムノンに取られたことに腹をたてて、それ以降出陣しなくなったと、なかなかワガママで扱いにくい人物だったに違いない。でも、正常では圧倒的な力と存在を示していたんだろうな。こんな行動ができる人になってみたいものですな。
ギリシア神話上下を読んでみて、話が規模が大きいので、何度も読まないと全体像が理解できないし、地域、時代、男女などを知るにはもっと時間をかけないとダメだなぁと思った。
2010年3月28日日曜日
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